素材の話

ヘンプ

ヘンプは大変に優れた天然素材だということをご存知でしたか?布、紙、食品、医薬品など多目的に使用でき、また除草剤などの農薬は全く必要ありません。成長が早く、収穫は年に数回可能です。こんなに環境に優しく、役に立つ植物ですが、ラテン語の学名Cannabis sativaといい、実はあのマリファナのことなのです。古くから日本では大麻が栽培されていましたが、現在、日本の法律では栽培は禁じられています。日本でいう「麻」というのはこの種の植物の総称で、大麻、苧麻、黄麻、亜麻などの種類があります。また、沖縄の芭蕉布の芭蕉も麻の仲間です。

ヘンプ布は、茎の繊維を裂いてその繊維を布に織り上げたものです。大変丈夫な布で、かつて帆船の帆などにも使われました。Levi'sの最初のジーンズは、コットンではなくてヘンプ布でできていたそうです。丈夫なだけでなく、ヘンプの繊維は中が空洞になっており、外気の寒暖に応じて暖かくも涼しくもなるのです。

Rice Fieldが輸入しているヘンプの衣料は、バンコクのThe Golden Triangleのオリジナルです。ここでは、ゴールデントライアングルに住むモン族の古いヘンプを使って、新しいデザインで美しい衣料に作り直しています。白モン族の女性のプリーツスカートのプリーツを伸ばし、洗濯して汚れを落とし、再び染め直して縫製します。また、青モン族のロウケツ染を施したヘンプ布も使います。これは染め直しをせずに、モン族がインディゴで染めたままの布を使用します。

何故、そんなに手間のかかることをするのでしょうか。まず、かつてのモン族のヘンプ布はたいへん丁寧に織り上げられ、丈夫で美しい布でした。売るために織ったのではありません。モン族の女性が、自分や家族のために丹精こめて織り上げたからです。また、衣服を石や岩に打ち付けるという洗濯方法をとっていたため、布の繊維がものすごく柔らかくなっています。そのオールド・ヘンプを使うと、信じられないくらい柔らかくて肌触りのよい衣料ができます。私は麻は皺ができるものと思ってきました。このオールド・ヘンプはそんなに皺にならず、できた皺もハンガーに掛けておけば自然に伸びてしまいます。もちろん、丈夫で温度調節が自然にできるというヘンプの特性はそのままです。

どうしてわざわざ古いヘンプ布を使うのか、お判りいただけたでしょうか。モン族はヘンプ布に美しい刺繍やアップリケをします。一着分の衣服が出来あがるのに、半年から一年を費やすそうです。こんなに素敵な民族衣装ですが、近年ではほとんど見られなくなり、観光客に見せるためだけに民族衣装を着るというようになってきています。

コットン

Rice Fieldでは、手織りコットンのみを扱っています。山岳民族のオールド・コットンは、各部族ごとに特色のある織りがあり、みごとな織りの技術にため息が出ます。

山岳民族のオールド・コットンは、厚手でたいへん丈夫なうえに、手織りならではの肌触りと体に心地よくフィットします。コットンの栽培は、ヘンプに比べると手間がかかります。でも、丈夫で染色し易く、肌触りの良さ、優れた吸湿性など、手間をかけて余りあるものがあります。

タイ北部のチェンマイでは、コットンの手織りが盛んです。草木染、手織りの美しいコットン布でできた衣類、スカーフ、インテリア雑貨などは世界中からの観光客やバイヤーを惹きつけて止みません。古布でなくても、手織りならではの柔らかさ、草木染の落ち着いた色合いなどが私達の心を和ませてくれるのです。

シルク

タイシルクは有名ですが、特に今人気なのが古いシルク・イカット(絣)の衣料です。最近では質のよくないものまで出回っているのが残念です。このタイのシルクイカットは、古くからイサンと呼ばれる東北部の農村で盛んに織られました。多色使いの絣織りは見事なものですが、近年ではこの織り手が減少し高級品となってしまいました。

当店では少量ですが、このオールド・シルクでできた衣料も扱っています。The Golden Triangleのオールド・シルク製品は、最上質のオールド・シルクのみを使用しています。残念ながら、最近では最上質のオールド・シルクが入手し難くなってきています。

新しいタイシルクは張りがあるのが特徴ですが、オールド・シルクは何度も水を通っているので、かなり柔らかくなっています。色も多色使いですが、丁度よく色が沈んでおり落ち着いた色合いになっています。タイシルクはたいへん丈夫です。水洗いしても、風合いはほとんど変わりません。吸湿性、放湿性ともに優れ、夏涼しく、冬暖かいというシルクの特性はもちろんタイシルクも同様です。

このオールド・シルクは、かさばらず皺にもなり難いため旅行にお持ち頂くのに最適です。スーツケースの片隅に入れて、旅行先でちょっとおしゃれして食事に行くなどという時に、必ずお役に立つ一着です。

竹

竹は日本をはじめ多くのアジアの国々で、古くから使われていた素材です。木は一度伐採すると成長するまでに多くの年月がかかります。竹は繁殖力が強く、伐採してもすぐに成長するため、天然素材としてはたいへん優れたものといえます。

竹の特性として、木材に比べて軽い(中が空洞)こと、加工しやすいこと、などが挙げられます。また、細く裂いた竹はさまざまな形に編み上げられます。最近では竹炭なども注目されています。しなやかで丈夫な竹は、籠類、家具、農具、建築資材など多目的に使われる万能素材です。

当店では、タイの職人が手編みした竹製バスケット類を販売しています。軽くて丈夫、伝統の技術が光る美しい手編みの籠は、現代生活でも大活躍です。

ヤオ族刺繍

ヤオ族の刺繍布は鮮やかな色使いと、地布が見えないほどに緻密に針を刺したクロスステッチの技術に特徴があります。

ヤオ族は中国語ができること、また道教を信じているという点が、他の山岳民族と大きく異なる点です。でも、他の部族と同様にその衣装はたいへん個性的です。特に女性の日常着は、頭にターバンを巻き、黒い上着の襟には赤いコットン糸のポンポンが付いています。黒のたっぷりしたパンツを履き、その前面にびっしりと刺繍をするのです。

女性は、小さな子供の時から刺繍を始めます。布は普通の手織コットンで、目の荒い刺繍用の布ではありません。理由は彼女達も知らないそうですが、裏から刺繍をして出来あがって表を見るとちゃんと柄ができているそうです。

日本でも「刺し子」や「こぎん刺繍」という技法があり、布を丈夫にすると同時に刺繍で美しく模様を描いて、実用性とおしゃれを同時に可能にしています。ヤオ族の刺繍は、この刺し子やこぎん刺繍に似たところがあり、日常着を丈夫にすると同時に女性のおしゃれ心を満たしてくれるものなのでしょう。

かつては地布を織り、刺繍糸も作ったようですが、現在では布や糸は他の部族の手作りのものを購入し、刺繍技術の伝統のみを維持しているようです。